解説・総説シリーズ(CR) 1-93

原爆被爆者の染色体異常データの解析のための二方法:擬似尤度モーメント法およびベータ二項法

中島栄二,大瀧一夫
J Jpn Stat Soc 24(2):209-19, 1994

要 約
ベータ二項モデルに基づく最尤法、および平均と分散の関係から導かれる疑似尤度モーメント法の二つの推定法が広島原爆被爆者のG-バンド法染色体異常データに適用された。経験的に、染色体異常の割合は個体内相関または放射線量推定誤差により過剰変動があると思われた。Pierce、Stram、Vaeth、Schaferの結論に基づいて、平均と分散の関係をそれら2つの変動に基づき定式化して擬似尤度法とベータ二項モデルを適用した。擬似尤度モーメント法は単一の超過二項パラメータしか推定できないが、しかし、ロバストである。一方、ベータ二項モデルは線量誤差変動および個体内変動の両方を推定できる。どちらの方法を使っても線量反応パラメータは似た推定値が得られた。しかし、擬似尤度モーメント法はベータ二項最尤法よりも、プログラム上より単純である。観察値が線量誤差によって撹乱されている状況では、疑似尤度法が推奨される。

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