解説・総説シリーズ(CR) 1-09

広島の遠距離被爆者に見られる高いがん死亡率は放射線が原因とは考えにくい

Grant EJ, 清水由紀子, 笠置文善, Cullings HM, Shore RE
Environ Health Prev Med 14(4):247-9, 2009
(第1パラグラフ)
渡辺ら[1](以下WMHYと呼ぶ)は放射線影響研究所(放影研)の寿命調査(LSS)第12報(http://www.rerf.or.jpでオンラインにより利用可能)の原爆被爆者データおよび広島県と岡山県の死亡率データ[2]を用いて、原爆時に広島に居住していたLSS対象者の標準化死亡比(SMR)を算出した。WMHYは集団対象者を、極めて低い線量(<0.005 Gy、VLD)、低線量(0.005-0.1 Gy、LD)、高線量(>0.1 Gy、HD)の三つの放射線量区分で分けた。ここで問題とするのは県全体の率に比べてがん死亡率が期待値よりも高かったVLD区分の男性である(簡潔にするために固形がんの結果のみについて述べる)。WMHYは、VLDにおけるがん死亡の増加は、中性子線量が過少推定されたか、もしくは残留放射線被曝が考慮に入れられなかったためであるという結論を出している。我々はこの結論が妥当ではなく、VLDに観察されたリスクは放射線以外の要因による可能性の方が極めて高いことをデータが示していると考える。理由を以下に簡潔に要約する。

上記の第1パラグラフは出版社(Springer)の許可を得て翻訳し、掲載した。オリジナルの論文はhttp://www.springerlink.comで閲覧可能。

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