放影研報告書(RR) 8-00

ブルガダ型心電図の頻度、発生率、および予後判定上の有用性―40年にわたる一般集団における研究

ブルガダ型心電図の頻度、発生率、および予後判定上の有用性―40年にわたる一般集団における研究
松尾清隆, 赤星正純, 中島栄二, 陶山昭彦, 瀬戸信二, 早野元信, 矢野捷介
J Am Coll Cardiol 38(3):765-70, 2001

要約

背景

ブルガダ症候群は12誘導心電図の右脚ブロックと右側胸部誘導におけるST部分の上昇および心室細動による突然死で特徴づけられる。しかし、このようなブルガダ型心電図の自然歴は不明である。

方法

今回、私たちは、長崎において1958年に50歳未満であった4,788人(男性1,956人、女性2,832人)を対象として1999年まで隔年の検診を行い、ブルガダ型心電図の一般集団における有病率、罹患率および予後を調査した。ブルガダ型心電図は、1)V1誘導における右脚ブロックを表すQRS波終末部のr’波、2)V1またはV2誘導における≧0.1 mVの凸型ST上昇、3)V2またはV3誘導における≧0.1 mVの凹型ST上昇と定義した。死因は死亡診断書から判断し、突然死は病院外で発生し急変から1時間以内の死と定義した。一方、事故死の場合、原因として心室細動によるかもしれない失神が原因として発生した例を原因不明の事故死と定義した。これら突然死と原因不明の事故死を併せて不慮の死と定義した。

結果

計32例のブルガダ型心電図が見つかり、有病率は146.2人/10万人、罹患率は14.2人/10万人年であった。罹患率は男性が女性より9倍高く、平均罹患年齢は45±10.5歳であった。ブルガダ型心電図はほとんどの例で間欠的に出現し、不慮の死の26%でブルガダ型心電図が見つかった。不慮の死による死亡率はブルガダ型心電図例が対照者より有意に高かった(オッズ比 52.63;95%信頼区間 22.78-127.75)。ブルガダ型心電図例の中でも不慮の死は失神の既往がある者がない者に比し有意に高かった(p<0.05)。

結論

ブルガダ型心電図は日本人の成人の中ではそれほど稀な所見ではない。ブルガダ型心電図例は不慮の死を引き起こすリスクが高いと考えられる。

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