放影研報告書(RR) 1-01

放射線による乳がんリスクへの影響:8集団をまとめて行った解析

Preston DL, Mattsson A, Holmberg E, Shore R, Hildreth NG, Boice JD Jr
Radiat Res 158(2):220-35, 2002; Errata Radiat Res 158(5):666, 2002

要約

八つの大規模コホートにおける放射線被曝後の乳がん罹患率を比較検討する。被曝の性質はかなり異なっており、1回または少数回の高線量率被曝(日本の原爆被爆者、米国の分娩後の急性乳腺炎患者、スウェーデンの良性乳房疾患患者、および米国の胸腺肥大の小児患者)から、幾度も繰り返された高線量率被曝(米国の二つの結核患者コホート)や長期にわたる低線量率被曝(スウェーデンの二つの皮膚血管腫患者コホート)まで多岐にわたっている。180万人年の追跡期間中、77,527人の女性(うち約35,000人が被曝)に 1,502例の乳がん症例が認められた。その過剰リスクは線量に線形に依存しており、高線量で下降した。単純かつ統一された要約モデルでは、全群における過剰リスクを適切に記述することはできない。胸腺、結核、および原爆被爆者のコホートの過剰リスクは類似した経時的パターンを示し、相対リスクモデルでは到達年齢に依存し、過剰率モデルでは到達年齢と被曝時年齢の両方に依存していた。これらのコホートにおける過剰率は類似していたが、原爆被爆者の単位線量当たりの過剰相対リスクは結核あるいは胸腺コホートに比べて約4倍であり、これは日本人女性の乳がんのバックグラウンド率が低いことに幾分関係している。乳腺炎および良性乳房疾患コホートの過剰率は比較的高かった。血管腫コホートは低い過剰リスクを示しており、長期にわたる低線量率被曝では線量率の影響が改善されることを示唆している。比較が可能な被曝時年齢(約 0.5歳)では、血管腫コホートの過剰リスクは、高線量率に急性被曝した胸腺コホートの約7分の1であった。これらの結果は、乳がんの放射線線量反応が線形であることを裏付けるものであり、リスクに対する年齢および被曝時年齢の重要性を明白に示している。また、急性の高線量率被曝と幾度も繰り返された高線量率被曝ではリスクが類似していること、長期にわたる低線量率被曝の影響はかなり小さいことを示唆している。更に、良性乳房疾患の女性は放射線関連の乳がんに罹患するリスクが高くなっているかもしれないことが示唆される。

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