放影研報告書(RR) 9-01

日本人集団における骨粗鬆症リスク指標の成績

藤原佐枝子, 増成直美, 鈴木 元, Ross PD
Curr Ther Res Clin Exp 62(8):586-94, 2001

要約

背景

簡便なリスク評価質問票は、骨粗鬆症に対する認識を向上させ、骨密度(BMD)測定値の適切な使用を促進するために作成されたものである。しかし、これらのツールは主に白人または他のアジア諸国の集団を対象として開発されたものであり、日本人女性に適用可能か否かは明らかではない。しかも、日本で骨粗鬆症を診断する際のBMD基準(脊椎BMDが若年成人平均値の70%未満)は、他のほとんどの国で用いられている基準(BMDのTスコア≦-2.5または≦-2.0)と異なる。

目的

本研究の目的は、閉経後の日本人女性を対象に骨粗鬆症(脊椎BMDが若年成人平均値の70%未満と定義)女性を識別する四つの既存の骨粗鬆症リスク評価ツールの有用性を検討することである。

方法

四つの骨粗鬆症リスク指標、すなわち、アジア人女性に対する骨粗鬆症自己査定ツール(FOSTA)、骨粗鬆症リスク評価指標(ORAI)、骨粗鬆症リスク簡易推定計算値(SCORE)およびSOFSURFを、広島における成人健康調査に参加した47-91歳の閉経後女性1,127例を対象として算出した。脊椎BMDは二重エネルギーX線吸収法によって測定し、その値に基づいて骨粗鬆症か否かを確認した。

結果

骨粗鬆症の有病率は加齢と共に増加し、70歳以上では全女性の3分の1が骨粗鬆症であった。骨粗鬆症女性を識別する際に、四つのリスク評価ツールはすべて同様に機能し、感度を約90%に設定すると特異度は38-43%であった。FOSTAの3つのリスク群(高、中、低)別に、日本のBMD基準による骨粗鬆症の頻度をみると、高リスク群では43%であったのに対して、中リスク群では24%、低リスク群では5%に留まった。

結論

日本人女性における骨粗鬆症の有病率は、他の集団と同様に、高齢群で高かった。検討した四つの指標は、閉経後の日本人女性における骨粗鬆症リスクを分類する上で有効であった。これらの評価ツールを適用することによって、BMD測定の適切な利用が促進されると思われる。

戻る