放影研報告書(RR) 15-02

日本人集団におけるヘモグロビン値の経年的変化―放影研の成人健康調査において

山田美智子, Wong FL, 鈴木 元
Eur J Haematol 70(3):129-35, 2003

要約

年齢とヘモグロビン値の長期にわたる経時的関係についての報告では一致した結果が得られていない。我々は日本人集団での40年以上にわたるヘモグロビン値の経年的変化について、性・出生年・喫煙・貧血関連疾患を調整して解析した。解析には、4,858人の放射線影響研究所の成人健康調査対象者に対して1958-1998年の間に2年ごとに測定されたヘモグロビン値を用いた。mixed-effects modelによると、ヘモグロビン値の経年的変化は性(P < 0.001)ならびに出生年(P < 0.001)により有意な差が認められた。男性のヘモグロビン値は30歳代から40歳代でピークを示し、その後低下した。女性では30歳前後で一旦やや低下した後、60-70歳代でピークを示し、その後低下した。出生年が若い方がヘモグロビン値は高かった。60歳代以降のヘモグロビン値低下の割合は貧血関連疾患を有する対象者で大きかった(P = 0.002)。年齢70-80歳の疾患のない男性のヘモグロビン値の一年当たりの低下は0.083-0.042g/dL、同年齢の疾患のない女性では0.049-0.036g/dLであった。ヘモグロビン値は喫煙歴のある群で高く(P < 0.001)、喫煙歴の有無による差は男性よりも女性でよりはっきりしていた。年齢の増加に伴うヘモグロビン値の低下は貧血関連疾患を除いても認められ、高齢者での貧血は疾患のためだけではなく、加齢によるものであることが示唆された。ヘモグロビン値の変動には出生年や喫煙の影響も観察された。 Yamada M, Wong FL, Suzuki G: Longitudinal trends of hemoglobin levels in a Japanese population–RERF’s Adult Health Study subjects. Eur J Haematol 70(3):129-35, 2003. Copyright (c) Blackwell Munksgaard 2003 要約は出版社(Blackwell Publishing)の許可を得て翻訳した。

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