放影研報告書(RR) 17-02

原爆被爆者の肺がんリスクにおける放射線と喫煙の同時効果

Pierce DA, Sharp GB, 馬淵清彦
Radiat Res 159(4):511-20, 2003

要約

原爆被爆者の肺がんリスクに関する放射線被曝と喫煙の同時効果について、1994年までに認められた592症例に基づいた調査結果を報告する。喫煙情報は、放射線影響研究所の調査集団のうち 45,113人に対して行われた郵便調査および臨床問診から得られた。肺がんにおける放射線と喫煙の影響は、有意に準相乗的であり、かなりの相加性を示した。当該集団の以前の調査では非常に低かった喫煙の相対リスクが、現在では西洋の集団と同じレベルになっている。この増加は戦時中および戦後のたばこ不足に関係している可能性が高い。喫煙の相対リスクは性にほとんど依存しない。喫煙に関して調整すると、自然発生率と比較した非喫煙者の放射線に関連するリスクは、その他の固形がんのそれに近いものになった。すなわち、性別で平均化したシーベルト当たりの過剰相対リスクは 約0.9であり、女性と男性の性比は 約1.6であった。喫煙に関して調整することで、放射線相対リスクに見られる性と喫煙レベルの交絡による見かけ上の大きな女性と男性の性比が消失する。またこの調整により、放射線相対リスクにおける人為現象的な被爆時年齢の影響も消失する。これは他のがんとは反対の方向性を示すものであり、肺がん発生率における出生コホート変動によるものと考えられる。

戻る