放影研報告書(RR) 10-03

HLAハプロタイプは原爆被爆者における糖尿病発症に関係している

林 奉権, 藤原佐枝子, 森下ゆかり, 楠 洋一郎, 中島栄二, 中西修平, 鈴木 元, 中地 敬, 京泉誠之
Hum Immunol 64(9):910-6, 2003

要約

我々は原爆被爆者における糖尿病発症と遺伝的背景との関係に及ぼす放射線の影響について調べた。本研究の主要な目的は、糖尿病患者と対照者におけるヒト白血球抗原(HLA)遺伝子タイプと糖尿病との関係を調べることにより、原爆被爆者の糖尿病発症における遺伝的背景の役割を明らかにすることである。そのため、ポリメラーゼ鎖反応-塩基特異的オリゴヌクレオチドプローブ(PCR-SSOP)法により、広島の原爆被爆者(糖尿病患者111人と対照者774人)のDQA1およびDRB1対立遺伝子タイプを調べ、2型糖尿病発症に対する異なったHLAハプロタイプの影響を調べた。これらの対象者では、より高線量の集団において糖尿病リスクが上昇していた(trend p = 0.001)。特に、DQA1*03-DRB1*09またはDQA1*0401-DRB1*08のハプロタイプを有する被爆者では、高線量被爆者集団の糖尿病の頻度が非被爆者集団または低線量被爆者集団に比べて有意に高かった(それぞれtrend p = 0.002、p = 0.05)。これに対して、他のハプロタイプを有する被爆者集団においては被曝線量に伴った糖尿病リスクの上昇は認められなかった。これらの結果から、ある特定のHLAハプロタイプを有する人は線量に伴い糖尿病リスクが上昇しているかもしれないことが示唆される。

戻る