放影研報告書(RR) 11-03

電離放射線急性被曝と肝硬変との間に関連性はない

Sharp GB, 水野照美, 福原敏行, 徳岡昭治
Int J Radiat Biol 82(4):231-40, 2006

要約

目的

広島・長崎の原爆被爆者に関する以前の調査には、急性放射線被曝による肝硬変リスクの有意な増加を示したものと、慢性肝疾患リスクの有意な増加を示したものがあるが、これらの調査ではB型肝炎ウイルス(HBV)感染が考慮されていなかった。HBV感染は原爆放射線と肝硬変の両方に関連しているので、HBV感染、併発する原発肝がん(PLC)およびその他の交絡因子を調整した上で、電離放射線急性被曝と肝硬変との関係を検討することが今回の我々の目標であった。

材料および方法

横断的研究デザインの下に日本人原爆被爆者コホートに関する病理学的検討を行った結果、PLCに罹患した 335人のうち 213人(63.6%)に、またPLCに罹患しなかった 776人のうち 55人(7.1%)に肝硬変が認められた。

結果

原爆放射線急性被曝と肝硬変との間に関連性は認められなかった。肝臓被曝線量1 Sv当たりの肝硬変の調整オッズ比は 0.59(95%信頼区間:0.27-1.27)であった。被曝放射線量の最も高い三分位(平均線量0.7 Sv)の肝硬変リスクも、PLCの有無にかかわらず上昇しなかった(0.8、0.26-2.12および0.2、0.03-0.98)。

結論

PLCの有無にかかわらず、肝臓の放射線急性被曝によって肝硬変リスクは増加しない。

戻る