放影研報告書(RR) 11-04

慢性低血圧症例の基本的特徴:1958年から1999年にかけての長期追跡調査

赤星正純, 飛田あゆみ, 今泉美彩, 早田みどり, 前田蓮十, 市丸晋一郎, 中島栄二, 瀬戸信二, 矢野捷介
Hypertens Res 29(1):1-7, 2006

要約

慢性低血圧の頻度、加齢に伴う血圧経過および基本的特徴について調査した疫学研究はほとんど見られない。日本において1958年から1999年にかけて診察を受けた 13,370人(男性5,094人、女性8,276人)のうち、収縮期血圧(SBP、mmHg)が8年間以上 100mmHg以下で慢性低血圧症例と確認されたのは 92人(男性11人、女性81人)であった。これらの慢性低血圧症例と、これに年齢・性を適合させた 276人の対照者(男性33人、女性243人)の16年間のSBPと肥満度(BMI、kg/m2)の経過を調べたところ、この16年間で、慢性低血圧症例および対照は19歳から75歳の年齢範囲内であった。最終診察時における慢性低血圧症例と対照のBMI、心拍数(HR、bpm)、体温(℃)、血色素(Hb、g/dl)およびクレアチニン(Cre、mg/dl)を比較した。その結果、慢性低血圧症例は女性に多く(男性0.2%、女性1.0%、p = 0.001)、加齢に伴うSBPとBMIの増加はわずかであった。慢性低血圧症例のBMI(20.2±3.4)、BMIを調整したSBP(101±19)、HR(63±10)、体温(36.7±0.3)、Hb(12.5±1.1)、およびCre(0.81±0.13)は、対照より低値であった(対照ではそれぞれ22.9±3.4、126±20、68±10、36.8±0.3、12.9±1.1、および0.86±0.12)(p < 0.05)。この結果は、慢性低血圧症例は女性に多く、加齢に伴う増加を認めない低SBPに加えて、低BMI、低HR、低体温、低Hb、および低Creであることを明らかに示している。

戻る