放影研報告書(RR) 16-04

長崎原爆被爆者の発がんに糖質および脂質代謝は影響するか

飛田あゆみ、赤星正純、遠山杏子、今泉美彩、早田みどり、前田蓮十、市丸晋一郎、中島栄二、江口勝美
Nutr Cancer 52(2):115-20, 2005

要約

糖質または脂質代謝と発がんとの関係については、まだ十分に検討されていない。1983年から1985年にかけて、516人の長崎原爆被爆者に75 g糖負荷検査(75-g OGTT)と脂質の測定を行った。最初の検査時に既にがんに罹患していた人と、最初の検査後5年以内にがんを発症または理由を問わず死亡した人を除外し、残った451人(男性214人、女性237人)の中から2000年までにがんが発生した例を抽出し、Cox比例ハザードモデルを使って、糖質または脂質代謝ががんの発生を予測するかどうかを検討した。年齢と性について調整した発がんに関する相対リスク(RR)は、総コレステロール(10 mg/dl)、放射線被曝線量(1 Sv)、喫煙、および75-g OGTTでの負荷1時間後血糖値(1-h BG、10 mg/dl)において、それぞれ0.903(95%信頼区間[CI] = 0.842-0.968)、1.740(95% CI = 1.238-2.446)、1.653(95% CI = 0.922-2.965)、および1.024(95% CI = 0.996-1.053)であった。年齢、性、喫煙、肥満度、1-h BG、中性脂肪、総コレステロール、高比重リポタンパク質(HDL)コレステロール、および放射線被曝線量について行った多変量回帰解析でも、総コレステロールでは負の(RR = 0.872、95% CI = 0.793-0.958)、放射線被曝線量では正の(RR = 1.809、95% CI = 1.252-2.613)関係が、発がんとの間に見られた。がんの発生にはそれぞれ独立して、コレステロールとは負の、放射線被曝線量とは正の関係が認められるようである。 Copyright (c) 2004, Lawrence Erlbaum Associates, Inc. この要約を使用あるいは複製する場合は、Lawrence Erlbaum Associates, Inc.の許可を得てください。

戻る