放影研報告書(RR) 17-04

握力は中高年の死因別死亡率を予知する

佐々木英夫, 笠置文善, 山田美智子, 藤田正一郎
Am J Med 120(4):337-42, 2007

要約

目的

握力は全体的な筋力を評価するための簡便な計測値であるが、健康に関する予後の予知にも役立つかもしれない。縦断的研究により握力と死亡率との関係を調査した。

方法

この研究の対象者は、調査時の年齢が35-74歳であった4,912人(男性1,695人、女性3,217人)の広島の成人健康調査集団の対象者であり、1970年7月から1972年6月の間に握力を含む生理的計測項目の測定を受けた。死亡に関する情報は1999年末までのものを用いた。握力に関する死亡の相対リスク(RR)は、Cox比例ハザード解析によって可能性のある交絡因子を調整することにより推定した。

結果

男性の握力の最高五分位群における外因死を除く全死亡のRRは、多因子を調整した場合、35-54歳で0.52(95%信頼区間[CI]、0.33-0.80)、55-64歳で0.72(95% CI、0.53-0.98)、65-74歳で0.67(95% CI、0.49-0.91)と、いずれも参照群(第3五分位群)に対して有意に低かった。同様の傾向は女性でも観察された。多因子を調整した場合の外因死を除く全死亡のRRは、握力が5 kg増加するごとに有意に低下し、対応するRRは男性で0.89(95% CI、0.86-0.92)、女性で0.87(95% CI、0.83-0.92)であった。多因子を調整した場合の男性の心臓疾患、脳卒中、および肺炎のRRは、各々0.85(95% CI、0.79-0.93)、0.90(95% CI、0.83-0.99)、0.85(95% CI、0.75-0.98)であった。各5 kgの握力増加に対するRRは、追跡期間20年以上を経過しても0.92(95% CI、0.87-0.96)と低下した状態にあった。

結論

握力は中高年者における全死亡の的確で一貫した予測変数である。

戻る