放影研報告書(RR) 1-05

被爆55-58年後の広島・長崎の原爆被爆者における甲状腺結節と自己免疫性甲状腺疾患の放射線量反応関係

今泉美彩, 宇佐俊郎, 富永 丹, 錬石和男, 赤星正純, 中島栄二, 芦澤潔人, 飛田あゆみ, 早田みどり, 藤原佐枝子, 山田美智子, 江島英理, 横山直方, 大久保雅通, 杉野圭三, 鈴木 元, 前田蓮十, 長瀧重信, 江口勝美
JAMA 295(9):1011-22, 2006 – March 1

要約

背景

50年以上前に放射線被曝を受けた人において、甲状腺結節、自己免疫性甲状腺疾患などの甲状腺疾患に対する放射線被曝の影響については、これまで検討されたことがない。

目的

原爆被爆者における甲状腺疾患の有病率とその放射線量反応について評価する。 研究形式、設定および対象者放射線影響研究所の甲状腺調査に参加した4,091人のコホート対象者(平均年齢70±9歳、男性1,352人、女性2,739人)から成る調査研究。甲状腺調査は2000年3月から2003年2月にかけて行われた。

主要検討項目

甲状腺結節(悪性および良性)と自己免疫性甲状腺疾患を含む甲状腺疾患の有病率、および各疾患における原爆放射線量反応関係。

結果

甲状腺疾患は全対象者のうち1,833人(44.8%)に認められた(男性436人[男性の32.2%]、女性1,397人[女性の51.0%])(P < 0.001)。胎内被爆者、原爆投下時市内にいなかった人、被曝線量不明者を除いた3,185人では、全充実性結節、悪性腫瘍、良性結節、のう胞の有病率は、それぞれ14.6%、2.2%、4.9%、7.7%であった。また、抗甲状腺抗体陽性、抗甲状腺抗体陽性甲状腺機能低下症、バセドウ病の有病率は、それぞれ28.2%、3.2%、1.2%であった。有意な線形線量反応関係が、全充実性結節、悪性腫瘍、良性結節、のう胞の有病率において認められた(P < 0.001)。甲状腺被曝線量平均値0.449 Sv、中央値0.087 Svであるこの調査集団において、全充実性結節の約28%、悪性腫瘍の37%、良性結節の31%、のう胞の25%が放射線被曝に関連していると推定される。抗甲状腺抗体陽性(P = 0.20)、抗甲状腺抗体陽性甲状腺機能低下症(P = 0.92)、バセドウ病(P = 0.10)の有病率については有意な線量反応関係を認めなかった。

結論

原爆被爆者において、悪性腫瘍、良性結節を含めた甲状腺結節で有意な線形線量反応関係が見られた。しかし、自己免疫性甲状腺疾患では有意な放射線量反応関係を認めなかった。 American Medical Associationの許可を得て掲載。

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