放影研報告書(RR) 2-07

長崎原爆被爆者におけるシェーグレン症候群の有病率

飛田あゆみ, 赤星正純, 高木幸則, 芦澤潔人, 今泉美彩, 早田みどり, 前田蓮十, 中島栄二, 井田弘明, 川上 純, 中村 卓, 江口勝美
Ann Rheum Dis 67:689-95, 2008

要約

目的

包括的疫学研究でシェーグレン症候群(SS)の有病率を明らかにし、SSと放射線被曝線量との関係を調べた。

方法

2002年11月より2004年10月にかけて、合計1,008人の長崎原爆被爆者が、眼球および口腔乾燥症状に関する問診、シルマーIテスト、サクソンテストおよび抗SS-A/Ro抗体、抗SS-B/La抗体の検査、また必要な場合にはローズベンガル染色検査、唾液腺の超音波およびMRI検査に同意した。SSの診断は、アメリカ・ヨーロッパ合同検討グループによる診断基準とそれを一部改変したものに基づいて行った。

結果

1,008人の参加者(男性398人、女性610人、平均年齢71.6歳)のうち、154人(15.3%)が眼球乾燥を、264人(26.2%)が口腔乾燥を訴えた。シルマーIテストによる涙液分泌減少は992人中371人(37.4%)に、サクソンテストによる唾液分泌減少は993人中203人(20.4%)に認められた。全参加者中38人(3.8%)および10人(1.0%)で、それぞれ抗SS-A/Ro抗体および抗SS-B/La抗体が陽性だった。すべての結果を総合して、23人がSSと診断され(一次性20人、二次性3人)、有病率は2.3%となった。SSと放射線量との関連は有意ではなかったが、唾液分泌低下は放射線量と有意に関連していた。

結論

今回の包括的疫学研究で、長崎原爆被爆者におけるSSの有病率は2.3%であり、放射線量と関係がないことが明らかとなった。放射線量と唾液分泌低下との関連は、放射線被曝が唾液分泌機能に障害を与えた可能性を示唆している。

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