放影研報告書(RR) 5-07

胎内原爆被爆者の思春期における収縮期血圧と収縮期高血圧

中島栄二, 赤星正純, 錬石和男, 藤原佐枝子
Radiat Res 168(5):593-9, 2007

要約

広島および長崎で出生前に原爆に被曝した胎内被爆者臨床調査集団の対象者に対して、その思春期に年1回の医学検診が行われ、収縮期血圧と幾つかの身体計測値が記録された。1,014人の胎内被爆者に対し、9歳から19歳までの収縮期血圧データ(連続データ)と収縮期高血圧データ(二値データ)の合計7,029個の観察値(1人当たり6.93個の観察値)を用いて、2種類の経時解析が行われた。肥満指数あるいは体重は、可能性のある交絡変数として解析で考慮された。収縮期血圧の計測値に対して共通の線量効果は1 Gy当たり2.09 mmHgで、有意(P = 0.017)であった。トライメスターと線量の交互作用は示唆的(P = 0.060)であった。第二トライメスターで有意な(P = 0.001)放射線量効果が認められ、線量効果は1 Gy当たり4.17 mmHgと推定された。しかし、第一および第三トライメスターでは線量効果は有意ではなかった(P > 0.50)。収縮期高血圧の有病率に対しては、放射線量効果は有意(P = 0.009)で、1 Gy当たりのオッズ比は2.23(95%信頼区間 1.23, 4.04)であり、線量とトライメスターの交互作用は有意ではなかった(P = 0.778)。収縮期高血圧の線量反応の閾値は点推定値0 Gy(95%信頼区間 <0.0, 1.1 Gy)で、閾値を認めなかった。収縮期血圧に対する線量反応は第二トライメスターで最も顕著であり、この時期は血圧関連臓器の最も盛んな器官形成期である。

戻る