放影研報告書(RR) 8-07

造血系の放射線感受性とゲノム不安定性:X線全身照射したBALB/cおよびC57BL/6マウスの小核を有する網状赤血球頻度

濱崎幹也, 今井一枝, 林 奉権, 中地 敬, 楠 洋一郎
Cancer Sci 98(12):1840-4, 2007

要約

生体内における造血系の放射線感受性と誘発されたゲノム不安定性を評価する目的で、X線を全身照射したマウス末梢血中の小核を有する網状赤血球の頻度を、フローサイトメトリーを用いて測定した。放射線照射2日後の急性効果は0.1 Gyという低線量でも検出可能であり、線量効果はBALB/c マウスの方が C57BL/6マウスよりも有意に高かった。すなわち、マウスの二つのグループで確認された小核の頻度はそれぞれ3.0倍および2.3倍に増加した。X線を2.5 Gy照射したマウスでは、照射後1年を経ても、小核を有する網状赤血球の頻度は有意に増加したことが示された。すなわち、BALB/c および C57BL/6マウスでそれぞれ1.6倍および1.3倍の増加が認められた。しかし、この遅延効果は同じマウスの脾臓細胞のT細胞レセプターの変異頻度測定では確認されなかった。また、小核を有する網状赤血球頻度に及ぼす放射線の遅延効果には、有意なマウス系統差が確認された。これらの結果は、マウスの造血系に対する放射線の遅延効果は生体内で長期間持続し、放射線で誘発されるゲノム不安定性の感受性にはマウス系統差が存在することを示している。 Hamasaki K, Imai K, Hayashi T, Nakachi K, Kusunoki Y, Radiation sensitivity and genomic instability in the hematopoietic system: Frequencies of micronucleated reticulocytes in whole-body X-irradiated BALB/c and C57BL/6 mice, Cancer Sci. 98(12): 1840-4, 2007. 出版社Wiley-Blackwell Publishing Ltd. www.blackwell-synergy.com/loi/cas の許可を得て掲載。

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