放影研報告書(RR) 16-07

日本人集団における肝細胞癌のリスク因子:コホート内症例対照研究

大石和佳、藤原佐枝子、John B Cologne、鈴木 元、赤星正純、西 信雄、高橋郁乃、茶山一彰
Cancer Epidemiol Biomarkers Prev 17(4):846-54, 2008

要約

背景

これまで疫学調査は、肝細胞癌(HCC)のリスクにおける 生活習慣関連因子の影響を明らかにしてきた。しかしながら、B型肝炎ウイルス(HBV) およびC型肝炎ウイルス(HCV)感染を厳密かつ詳細に考慮に入れて、そのような因子間 の相乗作用を調査したコホート研究はほとんどない。

方法

我々は、原爆被爆者の長期追跡コホートにおいて、HCC診断前の 保存血清を用いてコホート内症例対照研究を行った。調査対象は、224のHCC症例 と、その症例に性、年齢、都市、血清保存の時期と方法を一致させ、放射線量に 基づくカウンターマッチング法によって選択した644の対照例である。

結果

単変量解析では、HBVおよびHCV感染、飲酒、喫煙、肥満度指数 (BMI)、糖尿病がHCCリスクの増加と関連する一方で、コーヒー摂取がHCCリスク の低下と関連することが示された。HCCの多変量相対リスク(95%信頼区間)は、 HBV感染のみで45.8(15.2-138)、HCV感染のみで101(38.7-263)、HBVとHCVの 重感染で70.7(8.3-601)、1日当たりエタノール換算40 g以上の飲酒で4.36 (1.48-13.0)、HCC診断10年前のBMI >25.0 kg/m2で4.57(1.85-11.3) であった。更に肝線維化の程度を調整しても、HBVおよびHCV感染とBMI >25.0 kg/m2は、 独立したリスク要因として残った。HCV感染者においては、BMIの1 kg/m2増加に 対するHCCの相対リスクは1.39であった(P = 0.003)。

結論

HCCのリスク予防のために、過剰体重のコントロールは、慢性肝疾患、 特にC型慢性肝炎の人において、重要であると思われる。 The American Associations for Cancer Research, Inc.の許可を得て掲載。

戻る