放影研報告書(RR) 2-08

原爆被爆者の子供における成人期に発症する多因子疾患の有病率

藤原佐枝子, 陶山昭彦, Cologne JB, 赤星正純, 山田美智子, 鈴木 元, 小山幸次郎, 高橋規郎, 笠置文善, Grant EJ, Lagarde F, Hsu WL, 古川恭治, 大石和佳, 立川佳美, 錬石和男, 高橋郁乃, 芦澤潔人, 飛田あゆみ, 今泉美彩, 永野 純, Cullings HM, 片山博昭, Ross NP, 児玉和紀, Shore RE
Radiat Res 170(4):451-7, 2008

要約

親の放射線被曝によって、成人期に発症する頻度の高い多因子疾患(すなわち、高血圧症、糖尿病、高コレステロール血症、虚血性心疾患、脳卒中)の遺伝性リスクが増加するかどうかを調べる初めての研究が、1946年5月から1984年12月までに生まれた原爆被爆者の子供で郵便調査対象者となった24,673人の中から、健診を受診した11,951人について行われた。ロジスティック回帰分析で、年齢、都市、性、種々の危険因子を調整すると、被爆者の子供における多因子疾患の有病率と親の放射線被曝との関連を示す証拠は認められなかった。父親線量1 Gyにおけるオッズ比(OR)は0.91(95%信頼区間[CI] 0.81-1.01、P = 0.08)、 母親線量1 GyにおけるORは0.98(95% CI 0.86-1.10、P = 0.71)であった。ORへの親の被爆時年齢や、親の被爆から子供の出生までの期間の明らかな影響はなかった。父親が被爆している男性において低いOR(1 GyにおけるOR = 0.76)が示されているが、この所見には注意深い解釈が必要である。原爆被爆者の子供で、年齢の中央値が約50歳に達した約12,000人の臨床評価において、親の放射線被曝に関連して成人期に発症する多因子疾患の有病率が増加したという証拠は得られなかった。

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