放影研報告書(RR) 3-08

男性のブルガダ型心電図症例は前立腺がんの発症リスクが高い

春田大輔, 松尾清隆, 市丸晋一郎, 早田みどり, 飛田あゆみ, 世良至子、今泉美彩, 中島栄二, 瀬戸信二, 赤星正純
Circ J 73(1):63-8, 2009

要約

背景

血中テストステロン濃度の上昇が、ブルガダ症候群における男性優位の発現と前立腺がんの発症に関係していると考えられてきた。

方法と結果

我々は、1958年7月から1999年12月までの間に、長崎において2年に1度の健診を少なくとも1回以上受けたことのある2,681人の男性原爆被爆者の中から、34人のブルガダ型心電図を呈した症例を同定した。これらの男性被爆者について1958年7月から2004年12月までに新たに発症した前立腺がんを追跡調査し、コックス比例ハザード分析を用いてブルガダ型心電図、年齢、喫煙習慣、放射線被曝について前立腺がん発症リスクを解析した。前立腺がん症例は34人のブルガダ型心電図症例において4人(11.8%)、2,647人の対照群において54人(2.0%)であった。年齢を調整した解析では、ブルガダ型心電図症例において前立腺がんはより高いリスクを示した(相対リスク[RR] 5.42、95%信頼区間[CI] 1.96-15.00、P = 0.001)。更に、喫煙習慣と被曝線量を調整した解析でも、ブルガダ型心電図は、前立腺がんの有意な危険因子であった(RR 6.47、95% CI 1.97-21.21、P = 0.002)。

結論

ブルガダ型心電図は、年齢、喫煙習慣、被曝線量とは独立して前立腺がんのより高い危険因子である。ブルガダ型心電図を有する男性は前立腺がんの検査を定期的に受ける必要があり、逆もまた同様であり、特に高齢者においてはそうである。 日本循環器学会の許可を得て掲載。

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