放影研報告書(RR) 15-08

潜在性甲状腺機能低下症における代謝性心血管疾患危険因子とその集積

芦澤潔人, 今泉美彩, 宇佐俊郎, 富永 丹, 世羅至子, 飛田あゆみ, 江島英理, 錬石和男, 早田みどり, 市丸晋一郎, 中島栄二, 藤原佐枝子, 前田蓮十, 長瀧重信, 江口勝美, 赤星正純
Clin Endocrinol (Oxf) 72(5):689-95, 2010 May

要約

目的

これまで潜在性甲状腺機能低下症と心血管疾患(CVD)の関連を示唆する報告がなされてきた。放射線被曝の後影響を検討するための放射線影響研究所における原爆被爆者の観察は、潜在性甲状腺機能低下症と代謝性CVD危険因子の関連を検討するのに有用である。本研究の目的は、潜在性甲状腺機能低下症と、代謝性CVD危険因子およびその集積との関連を検討することである。

デザインおよび参加者

本研究は、日本において2000年から2003年に行った3,549人(平均年齢70歳、男性1,221人、女性2,328人)の横断的研究であり、その参加者は、潜在性甲状腺機能低下症の306人と甲状腺機能正常対照者3,243人で構成される。

検討項目

潜在性甲状腺機能低下症と、代謝性CVD危険因子である高血圧症、糖尿病、脂質異常症、高尿酸血症やそれら危険因子の集積との関連を検討した。

結果

潜在性甲状腺機能低下症は、治療を考慮して診断した高血圧症、糖尿病、高尿酸血症とは男女とも有意な関連はなかったが、男性のみの解析では、潜在性甲状腺機能低下症と脂質異常症との有意な関連が認められた(P = 0.02)。また潜在性甲状腺機能低下症の男性では、3個以上の代謝性CVD危険因子の集積において、年齢、body mass index(BMI)、喫煙状況を調整しても有意に高いオッズ比を認めた(オッズ比1.83、95% 信頼区間 1.13-2.94、P = 0.01)。またその関連は、原爆被曝線量を調整しても有意であった。

結論

潜在性甲状腺機能低下症の人においては、代謝性CVD危険因子の集積が有意に多いようである。

戻る