放影研報告書(RR) 8-09

原爆被爆者における肺がん罹患率への放射線と喫煙の影響

古川恭治, Preston DL, Lönn S, 船本幸代, 米原修治, 松尾 武, 江川博彌, 徳岡昭治, 小笹晃太郎, 笠置文善, 児玉和紀, 馬淵清彦
Radiat Res 174:72-82, 2010

要約

原爆被爆者の寿命調査(LSS)集団対象者において、放射線被曝が肺がんのリスクを上昇させることが明らかになっているものの、肺がんの主要因である喫煙と放射線の相互作用の特徴についてはまだよく分かっていない。1958年から1999年の間にLSS対象者105,404人から、1,803例の肺がん原発症例が確認された。個人の喫煙歴情報と最新の放射線量推定値を用いて、グループ化された生存時間に対するポアソン回帰モデルによって、放射線と喫煙の肺がん罹患率への同時影響を調べた。肺がんリスクは、いかなる放射線被曝線量においても、非喫煙者と比較して、喫煙経験者の総喫煙量および期間と共に上昇し、喫煙中止の期間と共に減少した。喫煙と放射線の交互作用については、単純な相加モデルや相乗モデルよりも、一般化された交互作用を仮定したモデルがデータによりよくフィットした。喫煙と放射線の同時効果は、一日当たりの喫煙本数が10本程度までは過剰リスクが急激に上昇するなど、軽度から中度の喫煙者に対しては超相乗的であるが、一日当たり1箱を超える重度喫煙者に対しては、放射線関連の過剰リスクがほとんど見られず、相加的あるいは準相加的であることが分かった。男女で平均した1 Gy当たりの肺がんの過剰相対リスク(30歳で被爆後の70歳時におけるリスク)は、非喫煙者に対し0.59(95% 信頼区間: 0.31-1.00)で、男女比は3.1であった。この集団における約3分の1の肺がん症例が喫煙に起因すると推定され、一方、約7%が放射線に関連していた。LSSにおける喫煙と放射線の肺がんへの同時効果は喫煙の強度に依存しており、単純な相加あるいは相乗モデルよりも、一般化した相互作用モデルによって、最もよく記述される。

戻る