放影研報告書(RR) 13-09

歯エナメル質における41Ca量:第2部 原爆被爆者における過去の中性子被曝線量の評価方法

Rühm W, Wallner A, Cullings H, Egbert SD, El-Faramawy N, Faestermann T, Kaul D, Knie K, Korschinek G, 中村 典, Roberts J, Rugel G
Radiat Res 174:146-154, 2010

要約

41Caは主として安定核種の40Caが低エネルギー中性子を吸収することにより生じる。我々は加速器質量分析法(AMS)を用いて、広島で爆心地から1.2 km以内で被曝した13人の原爆被爆者から提供された16本の歯のエナメル質における41Caを測定した。前回の論文で、バックグラウンドを補正した41Ca/Ca比は爆心地からの距離が遠ざかるにつれて19.5×10-15から2.8×10-15に低下することを示した。本論文では、測定した41Ca/Ca比は、同じエナメル質を電子スピン共鳴法(EPR)により測定して得られたガンマ線量とよく相関し、またDS02により計算から求めた41Ca/Ca比、あるいはもっと詳細な個別の線量評価から求めた41Ca/Ca比ともよい一致を示すことが明らかになった。これらの被爆者に対する、計算によるDS02中性子線量は約1から8 cGyであった。41Caの生成に関係する低エネルギー中性子の全中性子線量に対する寄与割合は、遮蔽条件により異なり、遮蔽が軽度の場合は寄与割合が小さく(10%、例えば屋外被曝)、遮蔽が重度の場合は寄与割合が大きい(26%、例えば日本家屋内の被曝)。これは、遮蔽物質により中性子線の局所的な速度低下を生じるからである。AMSは、ガンマ線との複合被曝の場合に、計算で求めた中性子線量の実証に有用であると結論される。

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