業績報告書(TR) 9-81

原爆被爆生存者における原発性肝癌及び肝硬変、特にHBS抗原との関係、広島・長崎,1961-75年

浅野正英、加藤寛夫、吉本恵子、瀬山進一、板倉英世、浜田忠雄、飯島宗一

編集者注: この報告書に基づく論文は、下記の学術雑誌に掲載されています。
  • Asano M, Kato H, Yoshimoto K, Seyama S, Itakura H, Hamada T, Iijima S. Primary liver carcinoma and liver cirrhosis in atomic bomb survivors, Hiroshima and Nagasaki, 1961-75, with special reference to hepatitis B surface antigen. JNCI 69:1221-7, 1982
  • 浅野正英、加藤寛夫、吉本恵子、瀬山進一、板倉英世、浜田忠雄、飯島宗一。原爆被爆生存者における原発性肝癌及び肝硬変、特にHBs抗原との関係、広島・長崎、1961-75年。広島医学 36:680-8, 1983

  • 要 約
    1961年から1975年までの期間に放影研寿命調査拡大集団中に原発性肝癌が 128例、放影研病理調査集団中に肝硬変が 301例観察された。全症例に orcein 及び aldehyde fuchsin染色 を行って、B型肝炎surface抗原(HBs抗原)を調べた。原発性肝癌の発生率は、長崎の方が広島より 2.0倍高く統計学的に有意差があったが、肝硬変の有病率では両市間にほとんど差異がなかった。長崎における原発性肝癌の高発生率を説明すると考えられる有意な所見としては、明白な肝臓疾患のない患者の肝臓におけるHBs抗原の頻度が、長崎では広島に比べて 2.3倍高く、原発性肝癌を伴う肝硬変、特に原発性肝癌を伴う肝炎後性肝硬変の頻度は、広島よりも長崎の方がほとんど2倍高かった。放射線の影響については、両市とも肝硬変の有病率と放射線量との関係が示唆されたが、原発性肝癌と線量との関係は認められなかった。長崎の原発性肝癌の高い発生率は、HBウイルス感染に起因するものと思われてならない。しかし、放射線の影響を受けた免疫能のようなその他の因子は無視できない。

    戻る