業績報告書(TR) 2-85

ヒト皮膚線維芽細胞の初代培養におけるX線誘発損傷からの回復

Miller RC,遠野真澄,山根 基,西亀正之

編集者注: この報告書に基づく論文は次に発表された。J Radiat Res (Tokyo) 26:346-52, 1985

要 約
外科手術を受けた 23人から得た甲状腺上皮組織の試験管培養を行った。線量反応生存曲線から、甲状腺細胞のX線に対する放射線感受性はヒトの乳腺上皮細胞及び皮膚線維芽細胞に比べて、ごくわずかしか高くないことが明らかになった。細胞生存曲線は、細胞によって放射線感受性に大きな変動が認められた。検査した細胞 23種のうち 21種は、低線量域で有意な肩状を示した〔類閾値(Dq)は0でなく、外挿値(n)が1以上〕。線量分割照射法を用いて、ヒト細胞の放射線損傷回復能を更に研究した。X線の総線量 304cGyを二等分し、種々の時間間隔で 2種の細胞に照射した。細胞の生存率は、時間間隔が 2時間以上になったときに最も高くなった。また 152cGyのX線をあらかじめ照射した細胞に、更に 4時間後に 2回目の照射を種々の線量を用いて行うと種々の線量を1回だけ照射したときの生存率と比べて細胞の生存率は増大した。しかし 2回目に与えた線量が少ない場合には、その差はほとんど認められなかった。これらの結果は、ヒト細胞は回復能があるが、回復反応を引き出すには比較的多量の線量を必要とするという以前の研究結果を支持している。

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