業績報告書(TR) 9-86

広島および長崎の対象集団の歯科X線被曝

安徳重敏,星 正治,Russell WJ

編集者注: この報告書に基づく論文は次に発表された。Oral Surg Oral Med Oral Pathol 67:354-60, 1989

要 約
広島・長崎における歯科X線線量を推定した。熱ルミネッセンス測定装置及びファントムを用いて測定した線量、並びに広島・長崎における歯科病院・医院における調査データを用いて、水晶体、下垂体窩、甲状腺及び皮膚に対する臓器線量を算出した。両市で 2週間にわたって行われた調査で得られたデータを用いて、これらの部位に対する1検査当たりの平均線量を算出した。1人当たりの年間平均線量を、年別検査頻度を示すデータから算出し、臓器、年齢、検査対象歯、検査の種類、対象集団、性及び都市別に集計した。年齢、対象集団、性又は都市別に見て有意差は認められなかった。現在のところ、歯科X線検査による線量は、原爆被爆者における放射線後影響の評価に偏りをもたらすほど高いものではないと考えられる。しかし、1人当たりの年間平均甲状腺線量が、広島・長崎でそれぞれ 62mradと 67mradであるということは、放射線誘発性発癌に対する寄与の可能性という点から看過できない問題である。

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