業績報告書(TR) 11-86

原爆放射線量改定の影響:線量推定法および癌死亡に関する予備的所見

Kopecky KJ,Preston DL

要 約
本報では、放影研が 1965年改定暫定放射線量推定方式(T65DR)に代わる新しい原爆放射線量推定方式を採用することに関し、予想される影響について検討する。現在日米共同で行われている原爆放射線量再評価により、やがて空気線量並びに建築物、人体組織の遮蔽による線量減弱に関する情報が得られるであろう。これらのデータに基づく各被爆者の全身表面線量及び臓器線量を計算する方法が開発され、この方法により 1984年末に放影研で利用できたデータを用いて、中間的な1985年線量推定値(I85D)を算出した。T65DR線量推定値を有する 91,231人の被爆者のうち 64,804人について、I85D全身表面線量推定値が計算できる。現在の計画では、更に、 10,000~12,000人の被爆者について、改定線量推定値がえられるであろう。I85D全身表面線量(ガンマ線及び中性子線)について、白血病並びに白血病を除くすべての癌による死亡を検討した。同じ被爆者群を用いて、T65DR線量による平行解析も行った。I85D全身表面線量に基づく放射線誘発過剰危険度の推定値は、総体的にT65DRに基づくものより 約50%大きかった。I85Dにおける放射線誘発過剰危険度の広島及び長崎の被爆者間の差は、わずか 3%以下であり有意ではなかった。性、被爆時年齢及び被爆後経過時間による放射線量反応の変化は、I85D及びT65DRと同質であった。白血病及びそれ以外の癌死亡の放射線誘発過剰危険度は、I85D全身表面線量の線形関数として増加することが認められた。純粋な二次線量反応関数では適合度が有意に低く、線形二次線量反応に有意に高い適合度はみられなかった。2つの線量方式において、中性子線のガンマ線に対する生物学的効果比が定数 10であると仮定した場合、I85Drem線量推定値に基づく放射線誘発危険度推定値は、T65DRに基づくものの 2.5~2.75倍であった。

戻る