業績報告書(TR) 13-86

原爆被爆者における肺癌,放射線および喫煙量,広島・長崎

Kopecky KJ,中島栄二,山本 務,加藤寛夫

編集者注: この報告書に基づく論文は次に発表された。広島医学 41:1153-68, 1988

要 約
原爆被爆者のコホートにおける肺癌発生率に対する電離放射線の被曝線量と喫煙量の影響を調査した。喫煙量に関するデータ(1963~71年の調査による)と被曝線量が入手されている被爆者 29,332人のうち、351例に肺癌が認められた。そのうち、219例の診断は組織病理学的検査に基づくもので、157例の診断は、著者らによって確認された。肺癌の過剰相対リスクのモデルは、次の2つの要素の合計として求められた。すなわち 1)原爆時年齢の低下に伴い上昇する放射線関連過剰相対リスクと、2)追跡調査開始時に判定した一日当たりの喫煙量と到達年齢に伴い上昇する放射線関連過剰相対リスクがこれである。放射線被曝の影響と喫煙量の影響との間に有意な相互作用は、認められなかった(p=0.72)。これは、両要因が結合して肺癌の相対リスクを相乗的でなく相加的に上昇させることを示唆するかもしれない。女性には喫煙者が少なく、男性喫煙者は多いので、この相加的相対リスクモデルによって喫煙の影響を調整したところ、肺癌の放射線関連相対リスクとバックグラウンド発生率の両方にみられる見掛け上の性差は実質的に減少した。腺癌又は類表皮癌よりも、小細胞癌の方に、放射線と喫煙に対して多少強い感受性が見られた。しかし、組織型別相対リスク関数の差異は、統計的に有意ではなかった。

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