業績報告書(TR) 6-87

日本人の血小板蛋白質に見られたヘテロ接合型の頻度と人種間における変異

浅川順一,Neel JV,高橋規郎,佐藤千代子,金岡里充,錦織栄子,藤田幹雄

編集者注: この報告書に基づく論文は次に発表された。Hum Genet 78:1-8, 1988

要 約
日本人85名の血小板蛋白質について2次元ポリアクリルアミドゲル電気泳動(2-D PAGE)後、銀染色を行い、62種のポリペプチドについて遺伝的変異の検討を行った。11種のポリペプチドに遺伝的変異型が認められた。へテロ接合型の頻度は 2.4±0.2%であった。血漿、赤血球、血小板蛋白質の 2-D PAGEで、日本人及び白人両集団に多型の頻度で認められた変異型は、これまでのところ10種である。対立遺伝子頻度を比較したところ、4種に有意な人種間差が認められた。更に、4種のポリペプチドは、一方のグループでは頻度は低いものの多型として検出されたが、他方では多型としては認められなかった。また、白人に多型の頻度で検出された3種のポリペプチドに相当するものは、日本人には認められなかったし、逆に日本人に多型の頻度で検出された11種のポリペプチドに相当するものは、白人には認められなかった。同一集団で1次元電気泳動法(1-D E)を用いた調査で多型を示した7種の酵素についても同様の比較を行った。その結果、2-D PAGEでの比較に比ベ、より多くの酵素に有意の人種間差が認められたが、これは、まず計算に用いた1-D E法での観察例数がはるかに多かったことに起因するものと考えられる。2-D PAGEと1-D Eとを用いて調査したポリペプチドのうち、人種間差の認められた頻度は類似していたが、このことは突然変異、自然淘汰、遺伝子頻度の変動といったものを考える際に、2-D PAGEで検討したポリペプチドと、血漿蛋白質や赤血球酵素について1-D Eで検討したものと大きく異なるものではないということの重ねての証拠である。

戻る