業績報告書(TR) 12-88

日本人原爆被爆者の免疫反応

秋山實利,楠 洋一郎,Bloom ET,Korn EL,Makinodan T

編集者注: この報告書に基づく論文は次に発表された。Radiat Res 116:343-55,1988 ; Int J Radiat Biol 53:189-98,1988

要 約
広島在住 1,341名の被爆者について、免疫反応のパラメータを検討した。検査実施予定日には、その都度、非被爆者(0Gy、DS86)を少なくとも1名、通常は 2名含むようにして、受診者 4~15名から採血した。単核細胞を末梢血より分離しインターロイキン2(IL-2)産生を調べた。更にリンパ球を精製してナチュラルキラー(NK)細胞活性とインターフェロン(IFN)産生を調べた。また血清についてはIFNと循環免疫複合体(CIC)濃度を調べた。それぞれの測定項目の統計解析は、線形モデル法を用いて行ったが、性、被爆時年齢、放射線被曝線量、すべての相互作用変数、測定の日などの各種変数がモデルに含められた。その結果、1)いずれの免疫学的変数にも放射線被曝の有意な影響はなく、2)NK活性とCIC濃度には年齢と正の相関があり、3)NK活性は平均的に女性より男性の方が高いことが示された。このデータは、従属変数が個人の間でも、また測定の日の間でも大きく変動する場合、放射線被曝との関連について明確な結論に達することが困難であることを示している。

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