業績報告書(TR) 17-88

逆間接酵素抗体法で選出したマウスモノクローナル抗体LISA 101による循環腫瘍関連抗原の検出

河野修興,京泉誠之,田辺 賢,小山 徹,Vossler MR,山木戸道郎,秋山實利

編集者注: この報告書に基づく論文は次に発表された。Cancer Res 49:3412-9,1989

要 約
可溶性分子を認識する特異性既知のモノクローナル抗体があれば、その分子上に存在する未知の抗原決定基と反応する他の各種モノクローナル抗体が、逆間接酵素抗体法(RI-ELISA)によって容易に選択できる。肺腺癌患者から得られた血清や胸水中に検出され、かつ以前に樹立したマウスモノクローナル抗体KL-6によって認識される決定基をもつ可溶性抗原と反応する新しいマウスモノクローナル抗体LISA 101をRI-ELlSAで選択した。競合阻止試験(competitive inhibition assay)や組織の免疫染色法から判定すると、LISA 101抗体によって認識される各抗原決定基の性質は、シアル酸化糖鎖化合物であるが、同じようにシアル酸化糖鎖化合物と反応するNS 19-9、FH 6、KL-6、C 50、CSLEX-1及びKM-93などのモノクローナル抗体によって認識される抗原とは異なるようである。固相化LISA 101抗体と酵素標識KL-6抗体を用いたbimonoclonal bideter-minant assayによって流血中抗原LISA 1-6を検出した。血清中のLISA 1-6抗原値は肺腺癌例の 63%(40例中25例)、膵臓癌例の 92%(12例中11例)に増加が認められ、他方、良性肺疾患例ではわずか 6.5%(31例中2例)、膵臓炎例では 7.1%(14例中1例)に増加が認められたにすぎない。

今回の観察結果は、LISA 1-6抗原が肺及び膵臓の腺癌の新しい腫瘍マーカーになり得ることを示す。なお、RI-ELISAは、可溶性分子上の未知の抗原決定基と反応する新しいモノクローナル抗体を選別するために広く応用可能な方法であろう。

戻る