業績報告書(TR) 10-89

成人健康調査における腹部超音波検査

Russell WJ,東 義孝,福谷龍郎,細田 裕,村上純滋,水島 明,川嶋 明,村山貞之,大内田敏行,三原 太,高木美和子,藤田正一郎

編集者注: この報告書に基づく論文は次に発表された。Acta Radiol 35:155-8,1994

要 約
超音波検査による癌及びその他の疾患の検出能力を評価するため、広島で 1981年11月1日から1985年l0月31日まで、長崎で 1984年8月1日から1986年7月31日までの間、成人健康調査受診者中広島 3,707名、長崎 2,294名の被爆者及び比較対象者の腹部超音波スクリーニング検査を行った。その結果、肝臓癌 7例、胃癌 3例、腎臓癌 3例、膀胱癌 2例並びに卵巣・膵臓・大腸・尿管・肝臓(転移性)の各癌 1例、計20例の癌が検出され、検出率は 0.33%であった。これらの癌診断はその後両市でそれぞれ 7例が剖検又は外科手術で確認され、広島 4例、長崎 2例が死亡診断書から確認された。20例の癌症例のうち 13例は無症状であった。これら癌 20例の超音波検査による検出及び診断が行われた後、診療録を調べて、他の検査法により癌が検出されていたかどうかについて検討したが、最近癌が検出されていたのはわずかに 3例であった。腫瘍登録及び組織登録についても同様に調べたが、以前に癌と診断された形跡は全く認められなかった。癌症例中 10例は原爆放射線を受けており、最高は 3,421mGy(DS86)にも達したが、癌有病率と原爆放射線量との相関関係は認められなかった。超音波検査により、良性と思われる各種腫瘍 259例も検出された。その他に多数の疾患も診断され、その有病率は胆石 7.7%、腎嚢胞 5.7%、肝嚢胞 3.8%であったが、検出された疾患の有病率に関する統計解析は行わなかった。

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