業績報告書(TR) 3-91

フローサイトメトリーを用いたヒト末梢血リンパ球におけるHLA-A遺伝子座突然変異検出法

久代淳一,平井裕子,楠 洋一郎,京泉誠之,児玉喜明,脇坂明美,Jeffreys AJ,Cologne JB,中村 典,秋山實利

編集者注: この報告書に基づく論文は次に発表された。Mutat Res 272:17-29, 1992

要 約
フローサイトメトリー法を用いて、HLA-A2 または A24ヘテロの血液提供者のリンパ球中に存在する HLA-A2 または A24対立遺伝子の発現喪失突然変異細胞頻度の測定法を開発した。

末梢血リンパ球中の突然変異頻度は 10-4のレベルであり、血液提供者の年齢と共に上昇した。突然変異クローンの分子レベルでの解析の結果、約3分の1は体細胞組換えに起因することが判明した。残りの3分の2についてはサザンブロット法でいかなる変化も検出されなかった。

原爆被爆者についての小規模な調査では、有意な線量効果は認められなかった。

試験管内突然変異誘発実験の結果は、HLA-A24遺伝子に関する突然変異頻度は 1Gy当たり 約2×10-4の割合で増加することが認められた.この値はリンパ球のX染色体に位置しているヒポキサンチン フォスフォリボシルトランスフェラーゼ遺伝子座について報告されている値よりも 約10倍高い。また、これらの突然変異の大半は大きな染色体レベルでの欠失に起因していることも明らかになった。

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