業績報告書(TR) 7-92

マウスリンパ系組織におけるリコンビネイション活性化遺伝子(RAG-1)の局限的発現

山本明仁,藤永博之,熱田 充,濱谷清裕

編集者注: この報告書に基づく論文は次に発表された。Cell Biochem Funct 10:71-7, 1992

要 約
マウス胸腺、脾臓およびリンパ節におけるリコンビネース活性の分布を決定するために、in situ ハイブリダイゼイション法を用いて、リコンビネイション活性化遺伝子、RAG-1および RAG-2の発現を調べた。大部分の皮質胸腺細胞に RAG-1の発現が見られたが、髄質内の胸腺細胞には、その発現は見られなかった。RAG-2のハイブリダイゼイション・シグナルは RAG-1ほど強くなかったが、RAG-2 transcript はRAG-1と同様の局在を示した。脾臓においては、洞(sinus)付近の限られた細胞にのみRAG-1の発現が見られたが、濾胞内のほとんどの細胞はRAG-1 transcript陰性であった。ヌードマウスにおいても、RAG-1を発現している細胞は正常マウスと同じ領域に見いだされた。このことは、脾臓において見られるRAG-1のin situハイブリダイゼイション・シグナルはB細胞起源の細胞によるものであることを示唆している。リンパ節におけるRAG-1の発現は髄質部位にのみ見られた。脾臓とリンパ節におけるRAG-2 transcriptの発現は、たとえあるとしても、あまりにも弱く特異的局在を決定できなかった。これらの結果は、ほとんどの皮質胸腺細胞と脾臓のある種の細胞は、それぞれ、T細胞リセプター遺伝子および免疫グロブリン遺伝子を再構成し得ることを示唆している。しかし、脾臓とリンパ節におけるRAG-1陽性細胞のRAG-1 transcriptが、遺伝子再構成以外の機能にかかわっている可能性は排除できない。

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