業績報告書(TR) 9-92

原爆被爆者の増殖性および非増殖性乳腺病変と放射線量との関係:剖検乳腺組織の病理組織学的検討結果

徳永正義,Land CE,青木陽一郎,山本 務,浅野正英,佐藤栄一,徳岡昭治,坂元吾偉,Page DL

編集者注: この報告書に基づく論文は次に発表された。Cancer 72(5):1657-66, 1993

要 約
広島・長崎の原爆被爆者およびその他の被曝集団の追跡調査によって、女性の乳癌リスクと放射線量との関係は立証されている。この関係は、20歳以前に被曝した女性に特に強く、40歳以後に被曝した女性でははるかに弱いようである。本調査では、放影研の寿命調査集団における高線量および低線量被曝者の剖検例の乳腺組織標本を精査し、非増殖性および増殖性乳腺病変が放射線量と関係があるか否かについて検討した。

その結果、増殖性病変全般、特に異型過形成は放射線量と関係があり、そのリスクは被爆時年齢40-49歳の女性で最も高いことが示唆された。この所見は、放射線誘発乳癌の年齢依存性と関連しているという仮説が考えられる。すなわち、この年齢で放射線被曝により誘発された初期変化に基づく潜在癌は、ホルモンによる促進効果をうけることがほとんどなく、明瞭な癌に進行することはまれなのではないかということである。


戻る