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広島で「第4回市民公開講座」を開催

平和記念資料館のメモリアルホールで開催された第4回市民公開講座

放影研は2013年11月30日(土)午後2時から4時半まで、広島平和記念資料館のメモリアルホールにおいて、第4回広島市民公開講座を開催した。この市民公開講座は、原爆放射線の健康影響に関する放影研の長年にわたる研究の成果について原爆被爆者や被爆二世の方々をはじめ一般市民の皆様に情報を提供し、交流を促進することを目的としている。

このたびの市民公開講座は、「放影研保存試料の活用を考える」をテーマとし、放影研の生物試料センターと、共同研究も含めた保存試料の活用法に関して一般市民の方々から意見を頂くために企画された。生物試料センターは2013年4月に設立された放影研の新組織で、2014年度から本格稼働を開始する予定である。パネルディスカッション形式で行われた今回の公開講座には160人以上の市民が参加した。

開会に当たり、寺本隆信業務執行理事が放影研のある比治山の様々な日常について紹介し、市民との交流を目的とする公開講座参加への謝意を述べた。次に、大久保利晃理事長が、「広島と長崎の原爆被爆者から提供して頂いた多くの生物試料を、原爆の健康影響研究はもとより、それ以外の放射線影響を含めた医学研究の進歩に資するよう最大限に活用することが、被爆者のご協力にお応えする最善の方法だと信じる」との趣旨説明を行った。

最初の演者は児玉和紀主席研究員・生物試料センター長で、「放影研保存試料の現状と活用について」と題し、放影研で保存されている被爆者の試料について詳述し、生物試料センターの概略を述べた。2人目の演者の広島大学原爆放射線医科学研究所の稲葉俊哉所長は「放射線健康影響研究における保存試料の役割」と題して、研究に用いられる血液細胞やがん細胞、その他の生物試料の究極的な所有者は誰なのかという難題にも触れた。2人の演者による基調講演の後、招待パネリストによるパネルディスカッションが行われ、続いて聴衆との質疑応答が行われた。

パネルディスカッションでは、パネリスト(前述の2人の演者と大久保理事長、パネルディスカッションの座長を務めた浅原利正広島大学学長、坪井 直広島県原爆被害者団体協議会理事長、山内雅弥広島大学病院特命広報・調査担当、および難波健治日本ジャーナリスト会議広島支部代表幹事)が放影研の生物試料の意義についてそれぞれの見解を述べた。山内氏は、共同研究提案に関する放影研の審査・承認過程における透明性の確保についての要望を表明した。難波氏は、共同研究遂行に際しての個人情報保護と指針の厳密な適用に関する懸念について述べた。自身が被爆者である坪井氏は、「放射線による健康影響を更に究明するために生物試料を共同研究に用いるべきであるという考えに賛同する」という意見を述べた。

公開講座の最後に設けられた質疑応答では、放射線影響研究の分野に携わる若手の研究者が不足する中、「どのようにすれば放影研は放射線影響研究の推進を継続していくことができるのか」という疑問の声や、「例えば放影研の倫理委員会に被爆者を参加させる必要がある」、更には「放影研が生物試料を用いた共同研究を行うことで研究の範囲を広げることを全面的に支援する」など、多くの意見が出された。

最後に、Roy E. Shore副理事長が「放射線の健康影響に関する理解を世界的に促進するために、放影研が保存試料を共同研究に用いる必要があることを市民の皆さんに理解していただきたい」と閉会のあいさつを述べ、公開講座は終了した。