寿命調査 第3報

TR番号 15-63

予研-ABCC寿命調査、広島・長崎:第3報 1950年10月-1960年9月の死亡率

Jablon S, 石田保広, 山崎 満

 

編集者注:

この報告書に基づく論文は、下記の学術雑誌に掲載されています。
石田保広: 国立予防衛生研究所-ABCC寿命調査第3報。広島医学 17:726-9, 1964
Jablon S, Ishida M, Yamasaki M: Studies of the mortality of A-bomb survivors. 3. Description of the sample and mortality, 1950-1960. Radiat Res 25:25-52, 1965
Jablon S, 石田保広, 山崎 満: 予研-ABCC寿命調査、広島・長崎。第3報。1950年10月-1960年9月の死亡率。広島医学 19:302-34, 1966

 

要 約

  1. 寿命調査の全サンプル、99,393人が今回の解析の対象である。1958-60年の間の死亡率を追求した。
  2. 原爆時以前の外国居住歴について被爆生存者と原爆時市内にいなかった人とを比較すると後者の市内転入の群に外国居住歴を持つ人が多い。
  3. 長崎至近距離被爆者には、広島より原爆時によく遮蔽されたものが多い。したがって 0-999mの地域では火傷、急性放射線症状を示した人の割合が長崎より広島の方が多い。
  4. この解析で扱った死亡数は 合計8,614である。最も多い死因は中枢神経系の血管損傷と悪性新生物死因である。
  5. 原爆時市内にいなかった人はどの距離区間の被爆者よりも低率な死亡比を観察した。
  6. 0-1,399mの被爆者はこれより遠距離の被爆者より全死因、全病死因、結核(広島男性)、白血病とその他の悪性新生物の標準化死亡比が高率であることがわかった。
  7. 0-1,399mの全死因の死亡比の研究は特に 1951-52年にかけて著しく上昇しているが、その後低くなる。また 1,400m未満の悪性新生物標準化死亡比は 1951-52年から 1957-58年にかけて年次とともに低下するが 1959-60年にかけて再び高くなる。
  8. 1950-60年間の自然死による死亡者あるいは白血病を除く悪性新生物で死亡した人が受けたと考えられるT57線量は最近の戸籍照合で生存していた被爆者の受けた線量より有意に高率であるとわかった。
  9. 爆心地からの距離別にみた場合、火傷や急性放射線症状により標準化死亡比が高くなったり、低くなったりすることはなかった。
  10. 被爆者の原爆時の地図上の座標別に標準化死亡比を求めると、死亡比の大小の一部に少なくともその地域の社会階級の影響を受けていることがわかった。それにもかかわらず広島では爆心地を含む地域で被爆したものの標準化死亡比は常に高く、放射線の影響が疑われる。

 

編集者注:

本報の次の部分は、伝染性疾病頻度、アレルギー、悪性腫瘍、および公衆衛生の観点から興味深い他の多くの症状に関するデータを含む。

 

挿入図表一覧

  1. 予研-ABCC寿命調査標本数
  2. 死亡診断書原死因別死亡数
  3. 10歳年齢階級別死亡数および死亡率
  4. 爆心地からの距離別人年数および観察時平均年齢
  5. 距離別年齢標準化死亡比
  6. 距離別全病死死亡数
  7. 距離別全死因死亡数
  8. 消化器・腹膜を含む子宮の悪性新生物による死亡数:距離別
  9. 全死因死亡数:2年間隔・距離別
  10. 悪性新生物による死亡数:2年間隔・距離別
  11. T57線量別全死因死亡数
  12. T57線量平均対数線量の比較
  13. T57線量平均対数線量比較の概要
  14. 全死因死亡数:急性放射線症・距離別
  15. 全死因死亡数:火傷の有無・距離別
  16. 原爆時の所在地区別死亡数-広島
  17. 原爆時の所在地区別死亡数-長崎
  18. 調査標本数:年齢・性・距離別-広島
  19. 調査標本数:年齢・性・距離別-長崎
  20. 調査標本数:年齢・性・距離別-広島+長崎

 

  1. 死亡資料の概要
  2. 外地居住歴:年齢・性・場所別
  3. 遮蔽区分:性・都市・爆心地からの距離別
  4. T57推計線量:都市・距離別
  5. 火傷:都市・距離別
  6. 急性放射線症:都市・距離別
  7. 急性放射線症:T57線量・都市別
  8. 急性放射線症:T57線量・年齢・都市別
  9. 年齢標準化死亡比:2年間隔・距離別
  10. 所在地区別年齢標準化死亡比-広島
  11. 所在地区別年齢標準化死亡比-長崎

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