胎内被爆者の身体的・精神的発育と成長

被爆に関連した小頭症および知的障害の発生増加は、1950年代後半に既に明らかにされていた。線量が0.005Gy未満と推定された胎内被爆者においては、1,068人中9人(0.8%)に重度の知的障害が見いだされたのに対し、線量が0.005Gy以上と推定された胎内被爆者においては、476人中21人(4.4%)が重度の知的障害と診断された。この重度知的障害が発生する確率は、被曝線量および被爆時の胎齢(特に発達の著しい段階)と強い関係がある。知的障害の過剰発生は、受胎後8-15週で被爆した人に特に顕著であり、受胎後16-25週で被爆した人ではそれよりも少なかった。一方、受胎後0-7週、または26-40週で被爆した人では全く見られなかった(図1)。また、重度の知的障害に至らない場合でも、受胎後8-25週で被爆した人に、線量の増加に伴う学業成績とIQ指数の低下が認められ(図2)、発作性疾患の発生増加も明らかになった。

図1. 胎内被爆者における被曝線量と胎内週齢別の重度知的障害

図2. 胎内被爆者における子宮線量(DS86)および胎内週齢別平均IQ指数と95%信頼限界

 

6人の重度知的障害者については脳の磁気共鳴画像診断が行われており、受胎後3カ月目から4カ月目に被曝すると、脳の構造に明らかな異常が引き起こされることが示唆されている。小児期被爆者と同様、毎年行われた胎内被爆者の身体測定でも、高線量被曝群において成人時(18歳)の身長、体重の全体的な減少が観察されている。この場合には、性や被爆時の胎児の週齢は関係がない。

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このテーマについての参考文献

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