被爆者の子供における染色体異常(1967-1985年の調査)

放射線被曝により親の生殖細胞に相互転座や逆位などの安定型染色体異常が増加したかどうかを調査するために、原爆被爆者の子供(F1)に関して広範な染色体分析が行われた。しかしF1における異常の増加を示す証拠は得られていない。

その調査では、両親の少なくともどちらか一方が爆心地から2,000 m以内で被爆(推定線量が0.01 Gy以上)している子供8,322人と、両親とも爆心地から2,500 m以遠で被爆(推定線量0.005 Gy未満)したか、あるいは原爆時に市内にいなかった子供7,976人が調べられた。その結果、被曝群では18人に、対照群では25人に安定型染色体異常が認められた(表)。しかしその後の両親および兄弟姉妹の検査により、突然変異の大半は新しく生じたものではなく、どちらかの親が保因者で遺伝したものであることが明らかとなった。そして新たに生じた染色体異常は、被曝群、対照群いずれも1例ずつであった。合計16例の異常については、親が死亡したか、調査への協力が得られないかの理由で由来を決定できなかった。しかし、検査を受けた親と受けていない親の線量分布は類似していた。

表. 原爆被爆者の子供における安定型染色体異常

異常の起源
染色体異常を持った子供の数
対照群
(7,976人)
被曝群*
(8,322人)
新たに生じた例
1(0.01%)
1(0.01%)
両親のどちらかに由来
15(0.19%)
10(0.12%)
両親の検査ができなかった例
9(0.11%)
7(0.08%)
合 計
25(0.31%)
18(0.22%)

*平均線量0.60 Gy

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