研究計画書 18-59

遮蔽調査および線量調査

目的

原爆の生物学的後影響を評価するには、調査対象者の被曝線量をできる限り正確に知る必要がある。基本的な線量の推定に必要な資料を求めるために、多くの固有因子や関連因子を調査考察する広範囲の研究が必要であるが、これは次の2つの表題に大別できよう。すなわち、原爆放射線被曝-初期放出エネルギー、空中線量、遮蔽、身体線量(全身線量、特定組織への線量、生物学的反応の差異)ならびに 汚染の可能性-残留放射能、降下物、X線照射(診断用、治療用、工業用)、放射性同位元素、自然放射能。ABCCは、この問題を解決しようと、Oak Ridge National Laboratories (ORNL)、また、日本の放射線医学総合研究所と共同で研究を続けている。

背景

個人別の線量をある程度正確に計算するためには相当の情報が必要である。原爆による放出放射線量のだいたいの程度については良好な推定値が求められているが、広島と長崎の原爆についてはその放射線量の測定が行われていない。そこで、全く同じものではないが、類似した核兵器の資料に基づいてこの推定が求められた。このほか線量計算には各個人が爆発の時にいた場所について正確に知る必要がある。最後に、各種構造物や状況による遮蔽の影響も総線量に対して大きな役割を果たしている。

ABCCでは、1951年からすでに遮蔽状態の調査を行っており、1953年には各個人の線量を推定する試みが行われていた。1956年中ごろに、米国原子力委員会生物学・医学部門の民間傷害班の支援を得て、ABCCとORNLの保健物理部との共同研究が行われることになって、この仕事は大きく促進され、”Ichiban” 計画と命名された。この研究で次の問題を取り上げた。すなわち、(1)原爆時の各被爆者の環境についての正確な記録(遮蔽物調査)、(2)この2つの兵器による放射線野の特徴と程度の決定(空中線量曲線)、(3)各種の遮蔽状況における放射線の空間的分布の決定、(4)新しい線量測定の伝達と調査への導入、技術的問題の解決および評価の不完全な要因の究明のため、定期的な訪日と書簡によって連絡を保ち、Ichiban研究班の研究結果の応用についてのABCCに対する援助を行うこと。

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