研究計画書 4-10

被爆二世臨床縦断調査

要約

【合理性】電離放射線被曝の遺伝的影響は、長い間、公衆衛生上の懸念事項であった。しかしながら、被曝者の子どもにおいて、成人発症の多因子疾患の潜在的リスクについてヒトのデータはない。縦断的な被爆二世臨床調査は、この重要な問題に関する最初の貴重な情報を与えるであろう。

【目的】原爆被爆者の子どもに対する臨床縦断調査(以下「被爆二世臨床調査」とする)の目的は、①親の原爆放射線被曝が子どもの多因子疾患およびその前触れと思われる異常の発生に及ぼす影響を検討し、②リスク評価の精度と信頼性を高め、③将来の調査研究のために生物学的試料を得て保存し、④健康診断(健診)や健康指導などを通じて、被爆二世の健康と福祉に貢献することである。

【方法】この前向き研究は、1946-84年に生まれた被爆二世の固定集団について定期的な健診を実施する。前回の被爆二世健康影響調査において、2000年5月から2008年11月までの間に、健康と生活習慣に関するアンケート票に対して郵送あるいは電話で返事があった郵便調査対象者16,789人の中で、14,175人が健診を希望した。この中で、2008年11月末までに実際に11,984人が健診のために放射線影響研究所(放影研)の外来を受診した。健診希望者の中で、死亡あるいは接触の拒否が確認された397人と現住所不明の1,320人を除く総計12,458人が適格対象者であると見なされた。

被爆二世臨床調査は、4年を1健診周期として行う。まず、対象者全員に健診概要のパンフレットを送付し、電話によるコンタクトを行って健診の受診をお願いする。健診の受診を希望した人については、健診案内の手紙と同意書の見本を事前に送る。臨床調査においては、受診者から同意書を得た上で、社会人口学的な生活習慣や病歴などの聴取(問診)、診察、身体計測、血圧測定、心電図、尿検査、血液・生化学検査、便潜血検査、腹部超音波検査、胸部X線検査などを行う。これらの健診で判明した高血圧、高脂血症、糖尿病、虚血性心疾患、脳卒中などの多因子疾患の発生と親の放射線被曝との関係を、交絡因子を考慮に入れて検討する。同意の得られた人については、将来の調査研究のために血液および尿の保存を行う。

本臨床調査では、受診者へ健診結果の報告や適切な健康指導を行い、必要があれば外部の医療機関への紹介を行うことによって被爆二世の健康管理と福祉に貢献する。

なお、原則として、健診の流れ、健診内容、倫理面に関する事項、データ管理などは、一般的に前回の被爆二世臨床健診調査(FOCS)と同様である。生物学的保存試料を用いた将来の調査研究は、別個に詳細な研究計画書を作成して、通常の放影研の審査を経て承認を得た後、実施する。

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