体細胞突然変異

染色体異常の項で述べたように、何十年も経た後でも放射線の影響がリンパ球細胞の染色体に残されているということは、放射線の影響が染色体DNAに含まれる遺伝物質に作用したことを意味している。従って、放射線により体細胞(卵巣や精巣における生殖細胞以外の細胞)に生じた影響も残されているのではないかと思われた。そこで、血液細胞を用いた幾つかの突然変異検出方法が試みられたが、赤血球におけるグリコフォリンA(GPA)遺伝子の突然変異以外は影響が保存されていないことが明らかになった。しかしGPA遺伝子突然変異細胞頻度は、放射線に被曝していない一般の人の間でも大きく異なっており、従ってその頻度は、個々人の被曝線量評価には適していないことが分かった。突然変異誘発率は1Gy当たり10-4レベルであり、他方、長寿命の骨髄幹細胞の合計数は十分に大きな数ではない(例えば数十万個)と考えれば、この結果は納得がいく。以上のことから、GPAテストは個人の線量評価には適していないが、似たような被曝をした一群の人の線量を評価する場合には利用が可能かもしれない。

このテーマについての参考文献

戻る