研究計画書 4-23

広島・長崎原爆被爆者における甲状腺疾患(RP2-99 のリニューアル)

要約

原爆被爆者では、寿命調査において被爆50年以上経過後も被爆時年齢20歳未満では甲状腺がんリスクが上昇していることが示されている。一方がん以外の甲状腺疾患については、成人健康調査で良性結節のリスク上昇が示されているものの、甲状腺機能異常や自己免疫性甲状腺疾患については一貫した結果が得られていない。そしていずれも横断的解析のみであり、縦断的解析はなされていない。さらに甲状腺疾患に対する胎内被曝の影響については、調査参加者数に限界の懸念があり十分な検討が行われてこなかった。

近年一般臨床で画像検査が汎用されるようになり、成人で甲状腺結節が発見される頻度が高くなっている。一般に甲状腺結節は定期的にフォローアップを行うことが推奨されているが、その方法、期間などは既報ガイドラインでも一定の見解が得られていない。その要因として、結節の長期自然経過や放射線被曝の影響についてデータが不十分であることが挙げられる。

本研究の目的は1)若年被爆者および胎内被爆者において、原爆放射線被曝と甲状腺疾患の発生率との関連を明らかにし、さらに2)原爆放射線被曝が甲状腺結節の進展に及ぼす影響を明らかにすることである。本研究により幼少時の放射線被曝が老年期の甲状腺疾患発生に及ぼす影響を明らかにする。さらに甲状腺結節の経時的変化とそれに対する放射線被曝の影響を解明することで、放射線被曝者において同定された結節の長期フォローアップ方法の策定に寄与することが期待される。

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